到着を待っている間に、来客用の敷布団と掛け布団とシーツとまくらカバーを私は押し入れから出して、畳の部屋に重ねた。部屋に男の子が来るのは、久しぶりだった。わたしはセックスをしたいと思えばただちにその男の子とセックスはするが、絶え間なくそのような欲望をいだいている、というわけでもないのだ。以前、男の子がこの部屋を出たり入ったりしたのは、三年以上も前のことになる。
西野くん、と私は声に出して言ってみた。西野くんの訪れを、私は確かに楽しみにしていた。西野くん、とわたしはもう一度声に出してみた。西野くんを好きになりたいな。好きになれるといいな。いつの間にか、そうわたしは願っていた。
誰かを好きになることがわたしは好きで、でも誰かを好きになることはなかなか難しい。わたしは自分の欲望をよく知っているから。自分がほんとうのところ何を望んでいるか、正直に自分に問うてしまうから。
西野くんのぜんぶを、欲しくなれるといいな。わたしはつぶやいた。
『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上弘美
今夜は、『京都で一番予約の取りにくい店』の一つ(笑)といわれるイタリアンに行って、ついさっき帰ってきました。
ミディアムボディのワインを飲んで、おなかいっぱい美味しいもの食べて。
ああ、これで終わってもいいかな。と思いました。
コメント